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アネゴ的カノジョ
第1章 姉と弟
それでも、足を動かせば進むもの。
「…はぁあ………」
優に三桁にも届いたであろう溜め息を吐き出すと、見慣れた景色が目に飛び込んでくる。
当然、何の躊躇いも無く敷地に足を踏み入れる。
一階の隅に住む大家の部屋を通り過ぎ、カンカンと音を鳴らして錆びた鉄階段を上がる。
一フロア三住戸の古びた小さな二階建てアパート。
六住戸あるうちの、半分が空き部屋。
「…こんなボロ…じゃねぇ……」
錆びた廊下の手摺りに悪態を吐きながら、二階の角にある木製の扉を解錠する。
ドアノブを引かずとも、キィィィという音をたてて自動的に開く扉。
「……安いだけ…あるよね………」
老朽化で作られた自動ドアを前に、雅人は顔を引き攣らせながらも部屋の中へと入っていった。