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アネゴ的カノジョ
第1章 姉と弟
「ただいま」
口数が少ないと言われても、挨拶はする雅人。
しかし、薄暗い部屋からの返事は無い。
特に気落ちする事も無く、狭い玄関から上がれば、直ぐ左手には脱衣所の扉。
そして数歩でトイレの扉。
更に数歩で、流し台を備えた六帖程度の洋室へと至る。
そして、その部屋の隣は襖で隔たれた四帖半程度の和室。
僅かな歩みだけで事足りる、こぢんまりとした部屋が雅人の住居だった。
当然、人影の無い部屋。
狭いベランダに面した窓からは、暗い駐車場が見下ろせる。
更に遥か向こうには、点々と明かりが点された高層マンションとビルの群れが見える。
「…あそこに住めるように……なれるのかなぁ………」
今の格安ボロアパートに比べたら、当然、グンと値が張るマンション。
クラスでも、あのマンションに住めれば勝ち組だという声すら聞いていた。
「……はぁ……」
自らの性格を考えると気が重くなる。
暗くなった景色をボンヤリと眺めながら、自己嫌悪に陥り始める。
「……みんな……姉ちゃんみたいならなぁ………」
ボソッと呟いた雅人。
その耳に、ドタドタとけたたましい物音が届いた。