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アネゴ的カノジョ
第6章 酒と温泉と…
「あ…いや……アタシは………」
杏子は正座した太腿をピタッと合わせ、開け掛かった浴衣の裾を直しながら苦笑を浮かべる。
缶ビールを半分でも飲めば、直ぐに酔える体質。
杏子を酔わすにはグラス半分のビールでも充分だった。
テンション落ち目の杏子。
今更この酔っ払い集団の一員になるのは勘弁だとばかりに、軽く手を振って遠慮する。
「せっかくオイラが持ってきたんスから一杯くらいはぁ」
それでも引き下がらない職人。
引っ越してきて杏子よりも後に入社したこの職人は、グイグイとビール瓶を差し出してくる。
…チッ……コイツもめんどくせぇんだよなぁ…
心中で悪態を吐く。
しかし、表情は変わらないだけに、職人のごり押しは止まらない。
「あ、アタシはこれがあるからさっ」
不意に視界の隅に飛び込んだグラス。
お膳の上にあったオレンジ色の液体で満たされたグラスを手にする。
「だったら、乾杯っスよぉっ」
職人はそれで気が済んだのか、杏子のグラスに自らのグラスを軽く当ててビールを一気に飲み干す。
「はぁ………」
酔っ払いの相手に思わず嘆息した杏子もグラスを手にしただけに、その液体で喉を潤した。
「あれぇ……俺のオレンジサワー……何処いったぁ?」
グラス半分程飲み干した所で、そんな職人の声が杏子の耳に届いた。