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アネゴ的カノジョ
第6章 酒と温泉と…
 
「こらぁっ、アタシの酒が飲めねぇってぇのぉっ?」

「あ…いや…オイラはもう………」

「散々アタシに飲め飲め言ってたのは誰だってぇんだよっ」

「え…えっと……オイラ……っスけど………」

「だったらアタシの酒も飲めるよなぁ?」

 グラス半分のサワーで酔っ払った杏子。

「あーあ…。キョウちゃん…たいして飲んでないのに………」

「がははっ。キョウちゃんに酒飲ましちゃダメだってぇのっ」

「そう言う棟梁……勧めてましたよねぇ」

「んな、ちっせぇ事気にすんなってぇ」

 周りの職人たちは、後輩職人にくだを巻き始めた杏子をつまみに相変わらずの酒盛りを続け、後輩職人を助ける気など更々無かった。

「しかもキョウちゃん……あぐら掻いちゃってるし………」

「……黒…か……」

「いつもと恰好が違うせいか……。何かキョウちゃんでもイケる気がしてきた………」

 他の職人たちが見詰める前。

 短い浴衣に太腿をピタッと合わせていた筈の杏子。

 しかし、酔って鈍った判断力は、雅人の部屋に居るものだと思い込ませていた。

「だからぁ…アタシが注いでやっからぁ」

「あ…いや…もぅ……オイラは………」

 絡まれている後輩職人。

 他の職人よりも間近で杏子の黒いショーツを拝んでいるものの、杏子の絡みの激しさに興奮を覚えている場合ではなかった。

「…チッ……つまんねぇなぁっ……」

 杏子は何を思ったのか、一つ舌打ちをすると立ち上がり、浴衣の乱れを気にする事もなく大広間を出て行った。

「た…助かったっス………」

 みんなが見送る中、後輩職人の呟きだけが流れた。


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