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アネゴ的カノジョ
第7章 長い夜
…むむ……なかなかやるな………
ベンチに座って脚を組み、浴衣の裾から伸びた膝に肘を着いて、杏子は顔を顰めた。
視線は左から右、右から左へと動く。
耳には温泉卓球とは思えない、カコッカコッと小気味よいラリーの音が届く。
「なかなかやるじゃないか助役っ」
タプンタプンと腹を揺らしながらも、やけに機敏な動きを見せる町会長。
「町会長こそ、流石は元卓球選手ですね」
町会長より二十歳近く若い助役は、体力と俊敏さで対等に打ち合っていた。
「なぁに、まだまだ若い者には負けん…よっと」
思い切り振り抜かれた町会長の腕。
今までよりもスピードが乗ったピンポン玉が、卓球台のコーナーへと向かう。
「なんのっ。私だって、まだ年上に負ける程落ちぶれちゃいません……よっ」
しかし、助役も素早く回り込み、逆に素早い腕の振りで返す。
白熱したラリーが五分以上続いていた。
明らかに温泉卓球の次元を越えている二人。
最初は律儀にピンポン玉を目で追っていた杏子。
しかし、あまりにも白熱している二人のテンションに追い付けなくなっていた。
…てか…アタシ……
居なくても良いんじゃないの……?
はたと気付いたのは、町会長が体力切れで倒れた時だった。