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アネゴ的カノジョ
第7章 長い夜
 
 ラケットを持った腕を伸ばした儘で俯せる杏子の頭の傍を、ピンポン玉が軽い音をたてて弾んでいった。


…あれ…アタシ……


 急に目が眩み、体に力が入らなくなっていた。

「どうやら、私の勝ち…ですね」

 卓球台に俯せる杏子に、笑みを堪えた助役の声が掛かる。

「ちょ…アタシ……まだ………」

 勝負はついていないとばかりに体を起こそうとするが、やはりクラクラとして力が入らない。

「その様子じゃ無理ですよ」

 ラケットをパンパンと手で叩きながら、助役は薄い笑みを浮かべていた。

「な…何で……」

「そりゃあ………」

 杏子の問い掛けに助役は卓球台から離れて、小さなテーブルに置かれた缶を手にする。

「それは………」

 顔の脇まで缶を持ち上げた助役。

 手にしているのは、杏子が口を付けた缶だった。

「アンズちゃん……お酒弱いのに、またサワー飲んだでしょ」

 吹き出しそうな表情を見せる助役に対して、杏子の表情は強張っていった。

「あれ……リンゴジュースかと………」

「リンゴサワーだったりするんですよ。町会長…間違えたみたいですね」

 またしても強くもない酒を間違って飲んだ杏子。

 そんな状態で体を揺するように動いていれば、酔いが回るのも当然だった。

「では…約束ですからね」

 酒を飲んだ事実に、表情を強張らせて俯せている杏子の傍に立った助役。

 その表情は、更にニヤニヤとしたものになっていた。
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