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アネゴ的カノジョ
第2章 想いと現実
流行っている地域から反対側へと視線を動かす。
畑が広がり、その奥には山。
麓に小中高と三校並んでいるだけの、長閑な景色。
畑に人の姿も無ければ、この畦道にも人影は無い。
唯一人影のある商店街は、学校の傍から畦道の手前で終わる。
当然、最寄り駅など、車で行かなければ無い。
ここからアパートまでは街灯すら無いような田舎。
杏子みたいに地元で働く人間でなければ、残りは老人か子どもしか居なかった。
「こっちだって…悪くねぇと思うんだけどなぁ………」
再び視線を戻せば、眼下に綺麗な水の流れ。
魚が泳ぐ姿さえ見れる程に澄んでいる。
四季折々に虫の鳴き声も響く。
そんな長閑な場所を気に入る杏子は、卒業してもここから離れなかった。
「でも…こんな時間に帰れとかさぁ………」
再び棟梁への不満が込み上げてきた杏子。
まだ、太陽も高い位置にある時間。
照り付ける陽射しもハンパなく強い。
歩いているだけで、汗が全身から滲み出していた。
「こんなあっちぃのに……うわぁっ!」
ぼやき出した杏子。
しかし、次の瞬間には悲鳴をあげていた。