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アネゴ的カノジョ
第3章 夜道と水難
 
「うわっ…わっ!?」

「ちょ……マズイね………」

 両手を頭に乗せて、無駄な抵抗を見せる二人。

 晴れていた夜空は瞬く間に黒くなり、街灯の無い辺りは暗闇に覆われた。

「と、取り敢えず、タケ…あっちだっ!」

「わ、分かったっ」

 道路を叩き付ける大粒の雨。

 その雨音の大きさに聴覚を奪われながらも会話を成り立たせる。

「確かあっちに……」

 僅かな感覚を頼りに先を進む杏子に、先程までの弱々しさは無かった。

 髪から爪先まで、一気にずぶ濡れになりながら駆け出す。

「タケっ! 大丈夫かっ!?」

 着いて来る足音が聞こえながらも、武彦に声を掛ける。

「う…うん。キョウ姉こそ………」

 叩き付ける雨粒に顔を顰めながら、武彦は杏子の小さな背中を追っていた。

「も…もう少しだからっ!
 た、確か……この辺………」

 僅かに脚を止め、雨粒に目を細めながら暗闇を見詰める杏子。

 その視界の悪さに軽く苛立ちながらも辺りを見回す。

「…タケっ! こっちっ!!」

 視界に飛び込んだ影に、杏子は武彦の手を引いて再び駆け出した。
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