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アネゴ的カノジョ
第3章 夜道と水難
「はぁっ…はぁっ…はぁっ………」
両膝に手を当てて上体を倒し、荒く息を吐き出す武彦。
「もう……走れ…ねぇ………」
杏子はデニム地のショートパンツから伸びた両脚をだらし無く投げ出し、木製のベンチに背を預けていた。
「はぁ…はぁ……。
此処なら…まだ少しはマシだろ………」
ベンチに寄り掛かった儘で振り返れば、僅かな水飛沫が顔に当たる。
稲光で照らされる数メートル先の路面は、未だに激しい音をたてていた。
こんな深夜では当然運行などしていない、本数の少ない路線バスの停留所。
四方を腰までの高さの板が覆い、一メートル程度の途切れた板の間から出入りする掘っ建て小屋。
学校からも距離があるだけに、屋根と庇があり、急な雨も凌げる場所だった。
「はぁ…はぁ……。まだ…あるとは思わなかったけどな」
未だに呼吸が整わないながらも、言葉を吐き出す杏子。
「車社会だから、バスなんて滅多に使う人居ないしねぇ」
対する武彦は体力の差なのか、既に呼吸は戻っていた。
板を貼っただけの安普請な建物の屋根。
叩き付ける大粒の雨音が響きながらも、二人は人心地ついたのだった。
「しっかしなぁ………」