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鬼灯の寵愛
第1章 幾千の時を越えて
「はい。貴女が良いのです。貴女でないと嫌なんです」
「…鬼、灯…さん……」
緊張の糸が切れ、ふ…っと、荊の体の力が抜けた。
鬼灯は腕で支えるように力強く抱き締める。
「ああ……やっと言えました」
普段の鉄面皮が、嬉しさから僅かながらほころんでいる。
しかし、鬼灯の胸に顔を埋めている荊には、その表情は見えない。
「…………」
「ずっと、何千年と、貴女だけを想っていました。この長い年月の間、こうして抱き締めたいと何度思った事か……」
力なく凭れかかる身体を愛おしそうに包み込み、髪を指で梳いた。
荊の白い髪はさらさら…と柔らかく流れていく。
そして、擽ったい様子でもぞもぞ身じろぎした後、荊はふと口を開いた。
「……鬼灯さん…?」
「はい、何です?」
「こういう関係になった事…まだ、誰にも言わないで下さいね…?」
「おや、それはまたどうして?」
「……上手く言えませんが……なんか、こう……うーん…………大げさかもしれないんですが……“閻魔庁の一大事”な気がするんです…………」
「……ふむ……」
「だから……」
荊は少し顔を上げて、鬼灯の顔を正面から見つめた。
「約束、して下さいね……?」
これほど至近距離で彼女の顔を見た事がなかった。
胸の高鳴りは隠せなかったが、努めて冷静に、鬼灯は返事を返す。
「……分かりました、約束します」
「良かった……」
「ですが、覚えておいて下さい」
「はい?」
「私としては、今すぐ地獄中に恋人関係になった事実を言いふらしたいんですよ」
「…………はい?」
「…鬼、灯…さん……」
緊張の糸が切れ、ふ…っと、荊の体の力が抜けた。
鬼灯は腕で支えるように力強く抱き締める。
「ああ……やっと言えました」
普段の鉄面皮が、嬉しさから僅かながらほころんでいる。
しかし、鬼灯の胸に顔を埋めている荊には、その表情は見えない。
「…………」
「ずっと、何千年と、貴女だけを想っていました。この長い年月の間、こうして抱き締めたいと何度思った事か……」
力なく凭れかかる身体を愛おしそうに包み込み、髪を指で梳いた。
荊の白い髪はさらさら…と柔らかく流れていく。
そして、擽ったい様子でもぞもぞ身じろぎした後、荊はふと口を開いた。
「……鬼灯さん…?」
「はい、何です?」
「こういう関係になった事…まだ、誰にも言わないで下さいね…?」
「おや、それはまたどうして?」
「……上手く言えませんが……なんか、こう……うーん…………大げさかもしれないんですが……“閻魔庁の一大事”な気がするんです…………」
「……ふむ……」
「だから……」
荊は少し顔を上げて、鬼灯の顔を正面から見つめた。
「約束、して下さいね……?」
これほど至近距離で彼女の顔を見た事がなかった。
胸の高鳴りは隠せなかったが、努めて冷静に、鬼灯は返事を返す。
「……分かりました、約束します」
「良かった……」
「ですが、覚えておいて下さい」
「はい?」
「私としては、今すぐ地獄中に恋人関係になった事実を言いふらしたいんですよ」
「…………はい?」