この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
銀の木洩れ日亭へようこそ
第3章 魔法を嫌う森
「礼を言う。おかげで死なずに済んだ」
宿屋内部のこぢんまりした食堂で卵粥をお代わりして平らげたジークは、向かいで茶を淹れる女性に深々と頭を下げた。
「申し遅れた。俺はジーク。
エーデルシュタインから…理由あって追われていて、この森に落ちた」
東方の魔術大国の名に、女性はほぉ、と目を丸くした。
「エーデルシュタイン…
最近は情勢があまり良くないと聞くけれど」
「勇者が魔王を封印して2年。魔物の脅威に怯える必要はなくなったけど、今度は人同士の争いで忙しい。人間は案外争い事が好きみたいだ」
皮肉を込めて苦笑するジークに大して興味もなさそうに彼女は相槌を打つ。
「まあエーデルシュタインに限らず、どこの国も似たようなもんか。…あそこから来たなら、君も魔術師なんだね」
その問いにジークはふいと目を逸らす。
「いくつか使える魔法があるだけで、魔術師じゃないよ。弓のほうが得意だけど、国では認めてくれる奴はいなかった…
そんなことより。
我ながら本当に運が良かったと思うけど…こんな場所に、しかも女性が独りきりで宿屋をやっているなんて。人を惑わす森の妖精…というわけでもなさそうだが」
冗談混じりに問いながら、ジークは女性の瞳を覗き込んだ。
自分はまだ、この美しい恩人のことを何も知らない。
「私の名はルチア。大魔術師だ」
ルチアと名乗った目の前の女性は、誇らしげに胸を反らす。
宿屋内部のこぢんまりした食堂で卵粥をお代わりして平らげたジークは、向かいで茶を淹れる女性に深々と頭を下げた。
「申し遅れた。俺はジーク。
エーデルシュタインから…理由あって追われていて、この森に落ちた」
東方の魔術大国の名に、女性はほぉ、と目を丸くした。
「エーデルシュタイン…
最近は情勢があまり良くないと聞くけれど」
「勇者が魔王を封印して2年。魔物の脅威に怯える必要はなくなったけど、今度は人同士の争いで忙しい。人間は案外争い事が好きみたいだ」
皮肉を込めて苦笑するジークに大して興味もなさそうに彼女は相槌を打つ。
「まあエーデルシュタインに限らず、どこの国も似たようなもんか。…あそこから来たなら、君も魔術師なんだね」
その問いにジークはふいと目を逸らす。
「いくつか使える魔法があるだけで、魔術師じゃないよ。弓のほうが得意だけど、国では認めてくれる奴はいなかった…
そんなことより。
我ながら本当に運が良かったと思うけど…こんな場所に、しかも女性が独りきりで宿屋をやっているなんて。人を惑わす森の妖精…というわけでもなさそうだが」
冗談混じりに問いながら、ジークは女性の瞳を覗き込んだ。
自分はまだ、この美しい恩人のことを何も知らない。
「私の名はルチア。大魔術師だ」
ルチアと名乗った目の前の女性は、誇らしげに胸を反らす。