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籠の中の少女
第1章 佐伯と小夜香
一番奥の部屋の方から――
一人の少女が歩いて来るのだ。
間違いなく、小夜香の瞳は一人の人間の姿をとらえているのだ。
見た瞬間、大人の女性ではなく中高生くらいの少女であることはすぐに分かった。
が、その少女の姿は『異様』だ。
風邪や花粉症の時に使うようないわゆる普通のマスクをしている。しかし、マスクの端からは明らかにボールギャグのそれと分かるような紐が見えていた。噛まされた上にマスクをさせられているのか。さらに、縄で後ろ手に縛られている。
普通に考えれば『異様』ではあるが、
――あたしと『同じ立場』なのかも…。
そう考えると小夜香は急に恥ずかしさを感じるものの、小夜香にとってみれば……『異様』とはいえない。
小夜香が感じた『異様』さはそこではなかった。
何かが、おかしい。
歩き方があまりにゆっくりで、歩くたびに左右の肩は交互に大きく上下して、よたよたというか何ともおぼつかない足取りなのだ。
――足が悪いの……?
小夜香は彼女の足元を見た。
そして自分の目を疑った。
つま先が――。
ないのだ。
ないというより、『異様』に足先が小さいのだ。
まるでつま先が切り落とされたかのように、足の甲が短いのだ。
履いている靴はぴったり少女の足に合っている。かといって子供用の靴でもない。甲の幅は少女の年頃なら普通の幅で、靴といえば当然細長いものだが、少女のそれはどちらかといえば『円』に近い。
そして足自体は靴下などではなく、包帯のようなものでくるぶしあたりまで何重にもぐるぐる巻きにされているようだった。
一人の少女が歩いて来るのだ。
間違いなく、小夜香の瞳は一人の人間の姿をとらえているのだ。
見た瞬間、大人の女性ではなく中高生くらいの少女であることはすぐに分かった。
が、その少女の姿は『異様』だ。
風邪や花粉症の時に使うようないわゆる普通のマスクをしている。しかし、マスクの端からは明らかにボールギャグのそれと分かるような紐が見えていた。噛まされた上にマスクをさせられているのか。さらに、縄で後ろ手に縛られている。
普通に考えれば『異様』ではあるが、
――あたしと『同じ立場』なのかも…。
そう考えると小夜香は急に恥ずかしさを感じるものの、小夜香にとってみれば……『異様』とはいえない。
小夜香が感じた『異様』さはそこではなかった。
何かが、おかしい。
歩き方があまりにゆっくりで、歩くたびに左右の肩は交互に大きく上下して、よたよたというか何ともおぼつかない足取りなのだ。
――足が悪いの……?
小夜香は彼女の足元を見た。
そして自分の目を疑った。
つま先が――。
ないのだ。
ないというより、『異様』に足先が小さいのだ。
まるでつま先が切り落とされたかのように、足の甲が短いのだ。
履いている靴はぴったり少女の足に合っている。かといって子供用の靴でもない。甲の幅は少女の年頃なら普通の幅で、靴といえば当然細長いものだが、少女のそれはどちらかといえば『円』に近い。
そして足自体は靴下などではなく、包帯のようなものでくるぶしあたりまで何重にもぐるぐる巻きにされているようだった。