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籠の中の少女
第1章 佐伯と小夜香
 小夜香は玄関を開けて外に出ようとした。
 が、縛られて下半身半裸で淫具責めのままである自分を思い出した。声さえボールギャグで封じられている。もちろんくぐもりながらも大声を出せなくはないが、何よりも佐伯を起こしてしまうのは必至だ。
 動けない。ここで覗くしかできないのだ。
 ――いや、ご主人様を急いで起こして知らせた方がいいんじゃ?
 ――でも……。
 やがて少女は、おぼつかない足取りのまま、扉越しに小夜香の前を通り過ぎて行った。
 その横顔は、あの小窓に押し付けられていた女性だと小夜香は確信した。
 佐伯はこのアパートに誰も住んでいないと言っている。が、実際に少女がこうして歩いている。佐伯がこのことを知らないとしたら――
 ――やっぱりご主人様に……!
 しかし、本当にこの確信は正しいのだろうか?
 ――あたしが勘違いしていることも、完全には否定できないかも……
 たまたま、よそに住んでいる少女がこのアパートにやってきただけなのかも知れない。
 ――だったら、何の用事で?
 小夜香はその考えがあまりに強引で、少女が一番奥の部屋に住んでいると考えるのが一番筋が通っていて何もかもつじつまが合うことを十分理解していた。
 そして何よりもその容姿から……彼女も小夜香同様、いずこかにいる『ご主人様』に調教されている最中なのかも知れない、と考えざるを得なかった。
 佐伯の奴隷となっている立場だからこそ分かることではあるが。
 結局、小夜香は少女の存在を佐伯に知らせることはできなかった。
 ためらうことしか、できなかった。
 おそらく普通だったら――少女の瞳に満ちあふれる、悲しさと憂いの色が小夜香の脳裏に強く焼き付いただろう。
 しかし、それ以上に小夜香の脳裏に焼き付いたのは、やはり少女の『足先』だった。
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