この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の少女
第2章 少女と小夜香
(1)
小夜香が例の少女を見てから二日が経った。
長かった夏休みも終わり、小夜香は久しぶりに座る大学の大教室の席で、講義も終わったのにぼうっ、とした表情で窓の外の木々を見ていた。
――あの子は……誰なんだろう?
――というより、あの足。
――生まれつき、足の悪い子なんだろうか。
小窓に押し付けられた横顔。
明らかに、誰かもう一人別の人間に部屋の奥へ引っ張られたような動き。
そしてマスクとボールギャグ。
包帯でぐるぐる巻きにされた、ものすごく小さな足先。
おそらく、少女は一番奥の部屋に住んでいる。これについては、佐伯が単に知らなかっただけだということは十分あり得る。でも――住んでいないという確信があってこそ、あそこまで自分を激しくお仕置きしたのではないのか。
――それにしても……ご主人様をあれだけ怒らせてしまうようなことなの……?
小夜香にとって佐伯の言うことは『絶対』だ。
でも――逆に、少女が住んでいることを知っていて、それを小夜香に隠そうとしていたら?
そうであれば、あの時のお仕置きの激しさにも納得がいく。
佐伯が少女の存在を隠したいなら、奴隷である小夜香はそれを詮索してはならないのだ。
それがいかなる理由であっても。
努めて、忘れるようにしなければならない。