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籠の中の少女
第2章 少女と小夜香

(1)

 小夜香が例の少女を見てから二日が経った。
 長かった夏休みも終わり、小夜香は久しぶりに座る大学の大教室の席で、講義も終わったのにぼうっ、とした表情で窓の外の木々を見ていた。
 ――あの子は……誰なんだろう?
 ――というより、あの足。
 ――生まれつき、足の悪い子なんだろうか。
 小窓に押し付けられた横顔。
 明らかに、誰かもう一人別の人間に部屋の奥へ引っ張られたような動き。
 そしてマスクとボールギャグ。
 包帯でぐるぐる巻きにされた、ものすごく小さな足先。
 おそらく、少女は一番奥の部屋に住んでいる。これについては、佐伯が単に知らなかっただけだということは十分あり得る。でも――住んでいないという確信があってこそ、あそこまで自分を激しくお仕置きしたのではないのか。
 ――それにしても……ご主人様をあれだけ怒らせてしまうようなことなの……?
 小夜香にとって佐伯の言うことは『絶対』だ。
 でも――逆に、少女が住んでいることを知っていて、それを小夜香に隠そうとしていたら?
 そうであれば、あの時のお仕置きの激しさにも納得がいく。
 佐伯が少女の存在を隠したいなら、奴隷である小夜香はそれを詮索してはならないのだ。
 それがいかなる理由であっても。
 努めて、忘れるようにしなければならない。
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