この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の少女
第2章 少女と小夜香
一方、小夜香と同じように、本当にあの少女も彼女の『ご主人様』に調教を受けているとして――これに関しては世間一般の人々にとっては『異世界』だったとしても――少なくとも『小夜香にとっては』忘れがたいほどの妙な話ではない。
結局、小夜香の頭にこびりついて離れず残るものといえば、少女の『足先』だけになる。
今も、はっきりとあの妙な形は鮮明な高解像度の画像として小夜香の意識に居座っていた。
「……ねぇサヤ、聞いてる?」
「えっ?」隣に座っている友人に声をかけられ、小夜香は我に帰って横を見た。
「まだまだ採用応募受け付けてる会社こんなにあるよ? サヤのために見つけて来たんだから」そう言って友人は資料の束を小夜香に広げて見せる。
「……あたしのために使う時間があるなら、自分のために使って」
小夜香はそう言いながら資料を手で払う。
「またそんな投げやりなこと言ってさ……卒業してからどうするつもり?」
「……またノイローゼになれって言うの?」
小夜香が小さく言い放つと、友人は黙りこんでしまった。
――もういいの。
――あたしにはご主人様が……。
――あの方があたしを守ってくれてるの。
――それで十分。
小夜香は頬づえをついて目をつむった。
小夜香の意識の前を、いくつかの景色や光景が速度の早いスライドショーのように駆け巡って行ったあと、激しく雨の降る電車のホームに立っている小夜香が映し出された。
結局、小夜香の頭にこびりついて離れず残るものといえば、少女の『足先』だけになる。
今も、はっきりとあの妙な形は鮮明な高解像度の画像として小夜香の意識に居座っていた。
「……ねぇサヤ、聞いてる?」
「えっ?」隣に座っている友人に声をかけられ、小夜香は我に帰って横を見た。
「まだまだ採用応募受け付けてる会社こんなにあるよ? サヤのために見つけて来たんだから」そう言って友人は資料の束を小夜香に広げて見せる。
「……あたしのために使う時間があるなら、自分のために使って」
小夜香はそう言いながら資料を手で払う。
「またそんな投げやりなこと言ってさ……卒業してからどうするつもり?」
「……またノイローゼになれって言うの?」
小夜香が小さく言い放つと、友人は黙りこんでしまった。
――もういいの。
――あたしにはご主人様が……。
――あの方があたしを守ってくれてるの。
――それで十分。
小夜香は頬づえをついて目をつむった。
小夜香の意識の前を、いくつかの景色や光景が速度の早いスライドショーのように駆け巡って行ったあと、激しく雨の降る電車のホームに立っている小夜香が映し出された。