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籠の中の少女
第2章 少女と小夜香
(5)
玄関扉には鍵が掛かっていなかった。
かえって不気味ではあるが、中には誰か住人がいて、鍵をかけずにそのままにしているということがあっても不思議な話ではない。
ということは、ここには今まさに誰かがいる可能性が高いのか?
小夜香はそっと中に入り、ゆっくりと音を立てないよう扉を閉めた。
中を見渡してみる。
廊下に突き出ている分、この部屋は間取りが違って少し広い。玄関を入ってすぐはキッチン付きの小さな部屋になっていて、奥にもう一つドアがある。その向こうにメインの部屋があるのだろう。
小夜香がいつも調教を受ける部屋と違って、このキッチンの部屋は明らかに生活の跡があった。フライパンや鍋などの調理器具があり、小さいながら冷蔵庫や食器棚がある。棚はほとんど空だが、いくつかの食器が見て取れた。
部屋の隅にはゴミが入れられた半透明の袋があり、食材パッケージと思われるものなどが入っているのが分かる。
ここは『人が住んでいる』のだ。
知っていたのか知らないふりをしていたのか、佐伯が事実と異なることを言っていたことはほぼ間違いない。
小夜香はサンダルを脱ぎ、玄関を上がって奥へと進んだ。
できるだけそっと音を立てず歩こうとするが、緊張で足裏には汗をかいていた。一歩進むたびにその湿り気によって起こる、床と足裏が密着してまたゆっくり離れる時に吸盤が立てるようなかすかな音が、小夜香には大音量に聞こえる。
奥の部屋へと進む扉の前までたどり着く。
この奥に誰かが居るのだろうか。
緊張と不安に包まれながらも、小夜香は他人の家に不法侵入している自分の大胆不敵さに戸惑いも覚えた。
小夜香は扉をゆっくり開き、その向こう側を見た。
そこには『半分予想だにしなかったもの』と、『半分予想通りだったもの』が『いた』。