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籠の中の少女
第1章 佐伯と小夜香
 桃尻に、再びバラ鞭が振り下ろされる。
 もう、叫び声も出ない。ボールギャグを咥えさせられているので最初から大声など出せはしないのだが、初めはくぐもりながらも叫ぶことはできた。今出せるのは、まるで熱にうなされた病人が精一杯絞り出すような低いうめき声だけだ。
 再び、バラ鞭。
 小夜香は、ボールギャグの隙間からだらりと唾液を垂らし続けながら、桃尻を無意識に跳ねるように引いた。すると股間が締まって二つの淫具の振動がより一層強く小夜香の内側を責め上げる。
 バラ鞭で与えられる苦痛と、バイブレーターで与えられる快楽。
 同時に襲ってくる対極にある感覚。
 どれくらい時間が経ったか分からないが、その二つの感覚の間を猛烈な速さで動く振り子のように行き来させられているうちに、苦痛が快楽に、快楽が苦痛に、苦痛はより苦痛に、快楽はより快楽に――腹部を中心に全身がドロドロに溶かされているような感覚に支配されていた。
 そういう意味で、小夜香の意識は朦朧としていた。
 状況は分かっている。
 身体が、与えられる感覚に対して示すべき反応に迷っているのだ。
 ご主人様からお仕置きを受けるときは、特にそうなのだ。
 そう、小夜香が悪い――。
 悪いことをしたからだよ? だからご主人様がお怒りになっているの――。
 辛い。
 この、翻弄される感覚がすごく、辛い――けれども。
 嬉しい。
 嬉しい。
 嬉しいの。
 だって今のご主人様は――。
 今は、今だけは、ご主人様は案件の書類にメモを走らせることもなく、家族想いの頼りがいある父親を演じることもなく、小夜香だけを見てくれてるから――。
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