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籠の中の少女
第2章 少女と小夜香
「痛いので……離してくださいませんか?」
小夜香は言った。
小夜香は、いざこういう時になると、なぜか内心おびえながらも強気の口調になるのが癖だった。
男は小夜香から腕を話した。「ああ、ごめんね! 僕はてっきり不審者だと思い込んでたからさあ」
男は妙に明るい口調と屈託のない笑顔でそう言った。
腕を離してもらって小夜香は少し落ち着きを取り戻した。
取り戻しつつも男と目が合った時……コントロールできない何かが全身を走った。
しかし気を取り直し、その男に言った。
「……初対面でいきなり不審者扱いされるのは失礼だと思います」
「ははは、不審者はたいてい初対面だろう? 第一誰も住んでいないアパートの最上階から人が降りてきたんだよ? 君だったら身構えないかい?」
「……本当に誰も、住んでいないんですか?」
小夜香は言ってから後悔した。
受け取りようによっては「少女の存在を知ってます」と言ったように聞こえるからだ。
男は笑顔を崩すことなく答えた。
「もちろん。ここにゃ猫一匹住んじゃいない。……いや、猫くらいはいるかも知れねえけど」
「あ……じゃあその……あたし、友達の家に遊びに来たんですけど、訪ねるところを間違えたみたいです……ここじゃないみたいですね」
小夜香はこわばった笑顔を作って言った。
「そうだねえ、明らかにお間違えになってるなぁ」そこで男は少し険しい表情をして続けた。「それよりも怖いのは……この辺りの不良たちが集まる巣窟になってんだよ。だからさ、分かるだろう?君のような若い女性なんて連れ込まれて何されるか分かったもんじゃねえよ?」
小夜香は一瞬安堵するような顔を見せた。
少なくともセリフからは小夜香を敵視しているような感じではなくなったからだ。
「ええ、分かりました、ありがとうございました。今日は帰ってまた出直そうと思います」小夜香は話をさっさと切り上げ、一刻も早くそこを立ち去ろうと階段を降り出した。
小夜香は言った。
小夜香は、いざこういう時になると、なぜか内心おびえながらも強気の口調になるのが癖だった。
男は小夜香から腕を話した。「ああ、ごめんね! 僕はてっきり不審者だと思い込んでたからさあ」
男は妙に明るい口調と屈託のない笑顔でそう言った。
腕を離してもらって小夜香は少し落ち着きを取り戻した。
取り戻しつつも男と目が合った時……コントロールできない何かが全身を走った。
しかし気を取り直し、その男に言った。
「……初対面でいきなり不審者扱いされるのは失礼だと思います」
「ははは、不審者はたいてい初対面だろう? 第一誰も住んでいないアパートの最上階から人が降りてきたんだよ? 君だったら身構えないかい?」
「……本当に誰も、住んでいないんですか?」
小夜香は言ってから後悔した。
受け取りようによっては「少女の存在を知ってます」と言ったように聞こえるからだ。
男は笑顔を崩すことなく答えた。
「もちろん。ここにゃ猫一匹住んじゃいない。……いや、猫くらいはいるかも知れねえけど」
「あ……じゃあその……あたし、友達の家に遊びに来たんですけど、訪ねるところを間違えたみたいです……ここじゃないみたいですね」
小夜香はこわばった笑顔を作って言った。
「そうだねえ、明らかにお間違えになってるなぁ」そこで男は少し険しい表情をして続けた。「それよりも怖いのは……この辺りの不良たちが集まる巣窟になってんだよ。だからさ、分かるだろう?君のような若い女性なんて連れ込まれて何されるか分かったもんじゃねえよ?」
小夜香は一瞬安堵するような顔を見せた。
少なくともセリフからは小夜香を敵視しているような感じではなくなったからだ。
「ええ、分かりました、ありがとうございました。今日は帰ってまた出直そうと思います」小夜香は話をさっさと切り上げ、一刻も早くそこを立ち去ろうと階段を降り出した。