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籠の中の少女
第3章 松岡と小夜香
(3)
佐伯の車の助手席で、小夜香は震え続けていた。
佐伯は彼女を部屋に迎えに来てから、一切何もしゃべらない。
小夜香は、また顔をしかめて腰をくねらせた。
尻が、痛い。
松岡に痛めつけられた尻がじんじん痛むのだ。
佐伯が使ったこともない一本鞭で容赦なく叩かれたため、ミミズ腫れにでもなっているのだろう。少し血も滲んでいるかも知れない。バラ鞭は力が分散される分、同じく与えられる刺激も分散するが、一本鞭の場合は全ての力が集中する。
しかも松岡の責め方は――
手加減を知らない。
尻だけでなく、クリトリスも秘唇も、股間全体も痛い。
しかし、小夜香が震え続けているのは痛みが理由ではなかった。
「……ご主人様……どうして……あの人に小夜香を預けられたのですか……?」
佐伯は何も言わず車を運転し続けている。
「……小夜香は……そんなに悪いことをしましたか……?」
佐伯はそれでも何も言わない。
調教部屋を出てから、何度同じことを小夜香が聞いても、佐伯は何も言わなかった。
小夜香は佐伯の横顔を見た。
突然、小夜香の目からは止めどなく涙があふれ出した。
「ご主人様……! どうしてですか……!? どうしてですか……!?」
小夜香は何度も泣き声で問い続けた。
それでも、佐伯は小夜香を見ようとすらしなかった。
小夜香が泣き出したのは、佐伯が何も答えないからではなかった。
そんなことはよくあることだったからだ。
佐伯は、話をする必要がないと考えている時は小夜香が何を言っても口を開かない。
そうではなく――。
小夜香の目には、佐伯がまるで急に人が違ったように映ったからだった。
話をする必要がないと考えて話さないのではなく、全く別のことに思考を支配されているような感じとでも言えばよいだろうか。
佐伯の目は、心が何かに完全に奪われ、まるで助手席は空席で一人で車を運転しているような――そんな目だった。
小夜香は佐伯のその目に、泣き出したのだった。