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籠の中の少女
第3章 松岡と小夜香
(4)
小夜香が『交換』されて以来、佐伯は調教部屋に来るたびに小夜香を松岡に預けるようになった。
次の調教の時も、その次の時も、さらにその次も、佐伯は調教部屋で小夜香を松岡に託して出て行った。
もちろん、なぜ小夜香を松岡に貸し出し続けるのか、その理由については佐伯は何も答えてはくれない。
小夜香は何度も『少女』のことを佐伯に聞こうとしたが、どうしても聞けなかった。そして不安だけが日々募っていった。
その不安を助長するようなことがもう一つあった。
松岡が一切小夜香の身体に手を触れないのだ。
二回目に松岡に差し出された時だった。佐伯が小夜香を預けて部屋を出て行くと、松岡は小夜香を縄で縛るでもなく、全裸にするでもなく、衣服は一枚たりとも脱がせることなく、ただ正座するように言った。そしてそのままソファに腰掛け、松岡は漫画雑誌を取り出してそれを読み始めた。
一向に小夜香の身体に触れる気配も、何かを命じる気配もない。
小夜香は、恐る恐る松岡に問いかけた。
「あの……あたしに何も……されないのですか?」
早く元通り佐伯に心も身体も預けたい気持ちで一杯であるがゆえに佐伯の命令を忠実に守ろうという意思がしゃべらせた言葉だったが、取り方によってはまるで松岡の責めを待っているかのような言い方になってしまったことに、小夜香は一瞬自己嫌悪におちいった。
すると松岡は漫画本から目を離さずに言い放った。
「飽きちゃった」
「……え?」小夜香は松岡の言葉をすぐには理解しかねた。
「あのさ、同じこと何度も言わせんのはバカのすることだぞ? 君に飽きちゃったの、僕は」
飽きたも何も、松岡が小夜香を責めたのは一回きりである。
もちろん、小夜香は松岡に身体を蹂躙されることなど望んではいない。ちょっと予想外のセリフだったが、小夜香には好都合である。