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籠の中の少女
第3章 松岡と小夜香
(5)
小夜香は、じっと床を見たまま正座を続けていた。
今日も、松岡はソファに座って漫画を読むばかりで、小夜香に一切触れる様子はなかった。
ふと、その時小夜香は耳をそばだてた。
――?
――寝息……?
小夜香は顔を上げた。
松岡がひざの上に漫画雑誌を広げたまま眠っている。
小夜香は、再び床に目を落とした。
しばらくして、小夜香はもう一度顔を上げた。
相変わらず松岡は寝息をたてている。
小夜香は少し考えたあと、小さく声を出した。
「あの……すみません……」
松岡は無反応だ。
「すみません」小夜香は少し大きめに声を出してみた。
全く松岡が起きる気配はない。
小夜香はゆっくり立ち上がった。
足がしびれてもつれそうになる。
一歩、松岡の方へ踏み出し、彼の様子を見る。
見たところ、かなり熟睡しているようである。
小夜香は松岡から目を離さず、ゆっくり後ずさりした。
やがて小夜香は玄関扉前までたどり着いた。
小夜香は前を向き、ゆっくりとロックを開く。
しかし、ロックは外れる時にどんなにゆっくり回しても、がちゃり、と音がするはずだ。
小夜香は振り向いて松岡を見ながら、できるだけそっと指を回す。
ロックが音を立てた。
小夜香にはそれが雷鳴のように大きな音に聞こえた。
そのまましばらく動かずに松岡を見る。
松岡は全く起きる様子がなかった。
小夜香は小さく息を吐き出すと、そっと扉を開いて顔を出した。
そして、廊下の突き当たりの部屋を見る。
小窓に――。
灯りが点いている――!