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籠の中の少女
第4章 佐伯と少女と松岡と小夜香
(1)

 奇妙だった。
 小夜香の目に飛び込んできた光景は――
 いくつかの点において、奇妙だった。
 確かに、そこに佐伯はいた。そして、一人の全裸の女性を責めていた。
 その女性は――あの足の小さい少女だった。
 少女は、両手を頭上に上げたような形で手首を縛られ、その格好のまま床に仰向けにされている。両足は股間を大きく開いたまままっすぐ伸ばされた形でおのおのの足首を縛って吊るされているので、上半身は床に寝かせられたまま、両足が直角に天井に向かって伸びている格好だ。足首を吊るしているのは、サンドバッグを吊るすのに使うような、スチールパイプ製の大きく背の高いスタンドの、上部にくくりつけられた縄だ。
 小夜香の位置は少女の横側であったため、彼女がどういう体勢で緊縛されているかすぐに見て取れた。
 そこまでは、別に奇妙ではない――少なくとも『奴隷』である小夜香にとっては。
 奇妙なのは――
 少女の足先は、以前見た通り確かに小さい。だが――
 素足にされ、むき出しになった少女の足を見て小夜香は目を疑った。
 彼女の足は、奇形だった。
 両足とも、『かかとの裏』が『つま先の方に』曲がっているのだ。曲がっているというより、ほとんどかかと裏が土踏まずにくっついている状態だ。そしてそのつま先は異様に小さい。
 立っている状態の普通の足先を直線に近い「〜」の字型だとすれば、少女の足先は小さな「V」の字型とでも言えばよいだろうか。かかととつま先の間は『まるでそこに関節があるかのように』折れ曲がっている。
 そしてその足先は肌が赤ん坊のようにすべすべで、それでいて艶っぽく――心なしか薄く桃色を帯びているように見えた。
 佐伯は――。
 火のついた蝋燭を手に、その少女の右足先に熱く溶けた蝋を垂らそうとしていた。
 小夜香には一瞥もくれない。
 少女はすでに軽く責めを受けた後なのだろう、よくよく見ると顔は上気して頬はうっすらと紅く染まっている。幼さを残したその顔には不釣合いな色合いだ。不釣合なだけに――
 妖しい。
 豆粒のような乳首は、それを乗せている乳房の未成熟なふくらみ具合に似合わない勃ち方をしている。まるでその『豆』の中で行き場のない情念が充満していて、今にも破裂して弾け飛びそうな勢いである。
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