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籠の中の少女
第1章 佐伯と小夜香
 佐伯の後ろで小夜香が一番奥の部屋の方をそっと見ていると……
 突然金属音が鳴った。
 金属音は、佐伯が鍵を鍵穴に差し入れた音だった。
 小夜香は全身に電気が流れたかのようにビクッと震え、ひゃっ、と声を上げて慌てて目を佐伯の背中に戻した。佐伯はゆっくり振り向いた。
 「……私の空耳なのか、小夜香の本当の声か、どっちだ?」
 「も、申し訳ございません……」
 声を上げたのは淫具のせいではない。
 佐伯に見つかると思ったからだ。
 ――『あっち』に目をやったことを。
 小夜香は考えた。佐伯はいつも施錠の確認に必ず扉を三回引いて確かめる。佐伯が鍵を回して施錠し、扉を三回引いて小夜香の方を向くまで五秒くらいか。その後も、勝手に付いて来いと言わんばかりに、小夜香に声もかけず廊下を歩き出すのが常だ。
 いずれにしても五秒程度ある。
 ――決して、ご主人様に逆らいたいわけではありません……。
 ――愛するご主人様に進んで逆らうような奴隷だとお思いでしょうか。
 ――違うんです。もう一度、確かめたいだけなんです。
 そして小夜香は廊下の端の部屋に再び目をやった。
 玄関扉横の小窓に――。
 今日、ここへ来た時と同じように。
 小夜香が徹底的にお仕置きを受けるきっかけとなったモノ――。
 が、小窓の向こう側にそれは見ることはできなかった。
 よくよく目を凝らしたところで、小窓は凹凸が付いた型ガラスなうえに明かりも点いてないため、中は完全にはっきりとは見えない。
 人の居る気配は全くない。
 ――あれは見間違いだったのだろうか。
 ――いや、そんなはずない。
 ――あんなにはっきり見えたんだもの。
 ――きっと、部屋の奥にいるんだ。
 小夜香は、今日ここに連れられて来た時のことをあらためて思い出してみた。
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