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みなしごの告白
第2章 告白 二
 常務は特に気にもされてないご様子でした。じゃあまた別の機会に、くらいの感じで、残念がるようでもなく、事務的にあっさりと電話は終わりました。逆にそれが怖いような……張り合いがないような、つまらないような……そんな風に感じてしまいました。けれど電話を終えてホッとしたのも事実です。そして彼に会うために着る服を選んだりして準備に入りました。その後……? ええ、もちろん約束通り彼と会って、お昼を一緒に食べて、……いえそんな、しょせん高校生のデートですからね。東京までも出ず、近くのショッピングモールとか、そのあたりをぶらぶらするだけの可愛いものですよ。でもね、彼はなかなか、私と付き合おうって、はっきりと言葉に出してくれませんでした。きっと、彼も緊張してたんだと思います。お昼でもスプーンを床に落としたり、何でもない場所でつまづいて転びそうになったり……、ふふ、マンガみたいでしょう? 絵に描いたような典型的な緊張ぶりで。学校での彼と全然様子が違いましたもの。それがどこか……頼りなさげに見えたというか、私……物足りなさというか、『乾き』みたいなのを覚えたんです。心の乾き――。その時何の前触れもなく私の頭の中をよぎったのは、常務の顔でした……。そしてとうとう、夕方ぐらいだったと思います……私、メールが来たかのようなふりをして携帯を見たんです。もちろん、何も来てないんですよ。その来ていないメールを見て驚いた顔を見せて、彼に急用が出来たと伝えました。彼は慌てて、私にちゃんと付き合おうという言葉を言おうとしたのですが……ええ、実際に彼は口にしてませんが、そう言おうとしていることはすぐに分かりました。でもそれを言わせないように携帯を操作するふりして耳に当てて、相手を母に見立てて電話で話しているお芝居をしました。親戚が事故に遭ったとかそんな適当なことを言ったと思います。そして母が車で近くに迎えに来てるってことを彼に言って、逃げるようにその場から走り去りました。……ふふ、実は母は免許すら持ってなかったんですけどね……。その後、近くのバス停でちょうどバスが来たので飛び乗ったんです。どこ行きのバスかも確かめずに……そして二つ目か三つ目のバス停で降りました。周囲を見て彼の姿を確かめて――居るはずないんですけど……その場で、私……
 常務に電話したんです。
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