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みなしごの告白
第1章 告白 一
 高校生の頃の私は、同級生から見たら地味でおとなしい生徒だったと思います。けれど二三人いつも仲良くしている友達もいましたし、これといっていじめを受けたこともありません。わりと、ぬるま湯といいますか、順風満帆な高校生活だったと思います。ただ、地味が災いしたのでしょうか、恋愛は全くなかったんですよ。生まれてこのかた、彼氏というものができたことがなかったんです。ですから、恥ずかしいのですけど高校卒業するまで私は処女でした。
 え? 恥ずかしいことではない? そう……かもしれませんね。でも私の通っていた高校では周りはほとんど経験済みで……。でも、全く何もなかったかと言えばそうではないんですよ? これからお話することに無関係とも言い切れないので、えっと……いえ、はしょってもいいんですけど……でもやっぱり順を追って一緒に話す方が話しやすいので……。あれは三年生の十月頃でした。会社から内定をもらって、その直後のことです。同じクラスの男子から告白されたんです。そして……あ……っ……ん……。
 ……ごめんなさい……え? いえ、大丈夫です。全然体調が悪いわけじゃありません。ちょっと色々思い出して……。続けますね。
 その告白してきた男子は、それなりに女子の間では人気があって、でも彼女がいるとか誰かと付き合ってるとかそういう話はそれまで一切なかったんです。見た目も顔立ちも整ってるし、運動もできる。それに加えて彼はうちの高校では珍しく大学進学を希望していて……成績がいつも学年トップクラスだったんです。……ええ、いい人だったと思います。でもね、三年生の十月と言えば受験勉強真っ最中でしょう? 彼は言いました。『勉強しないといけないことは分かってる。でも、どうしても気持ちを抑えられなかった』って……私も彼のことは嫌いではありませんでした。ただそれは恋愛感情などではなく、好感の持てるクラスメイトという程度で、好きだとか付き合いたいとかいう気持ちでは全くありませんでした。
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