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魅惑的な指先
第2章 謎の紳士

その紳士的な男性は私に会釈をすると、そのまま次の電車を待っているようだった。


もしかして、私に話し掛ける為だけに下車したのだろうか?
それはそれで申し訳ないけれど、私も急がなくてはならない。


「本当に、ありがとうございました。」


その言葉だけを残し、駆け出そうとした私。


「俺なら、あんな乱暴にはしないけどな。」


ふと耳に入ったその声に後ろを振り返ると、笑顔を向けながら小さく手を振っていた。



「今、何か言いましたか?」と聞こうとしたけれど、さっきまでの男性の口調とは違っていたからか、躊躇してしまう。


「どうかなさいました?
急いでいらっしゃるんじゃないんですか?」


「は…はい。失礼します。」


今度こそ、振り向く事無く駆け出すと…

また、同じその声が聞こえたんだ

「またね。」

と…。



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