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狂人、淫獣を作る
第4章 淫獣

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    ※  ※  ※

 「……リナに鞭打ちで絶頂する味をこの手で初めて与えてやったのはその時だったな」
 後藤が語るマユとリナのダブル調教の話が一段落すると、仲居が部屋の外から声をかけてきた。後藤が招き入れると、仲居は注文された寿司桶を置いて出て行った。
 少しずつ陽が傾いてきたのか、日の入りにはまだ時間がありそうだが若干日光が弱くなってきた。
 さっそく後藤は寿司をほおばり出したが、源は相変わらず将棋盤に視線を落としたまま駒を並べては直し、直しては並べを繰り返している。
 「マユもリナも、まさに今いるこの部屋で調教してやったこともある。外で鞭打ちもな」
 後藤の言葉に一瞬、源の手の動きが止まった。しかしすぐにまた駒を動かし出した。
 「あんたも食わないか? 山ん中の旅館にしては新鮮なネタだ」後藤は源の方へ寿司桶を少し押した。
 「……実は私もなんですよ」突然源が将棋盤を見たままで口を開いた。「私もこの部屋に泊まったことがありましてね、同じくまさにこの場で……奴隷を調教したことがあります」
 後藤は源の言葉の意味がすぐに分からず、ほおばったままの平目の寿司を噛むのも忘れ、固まった。
 「後藤氏、できれば避けたかった友人のことに触れさせてまで、あなたの話を聞かせてもらったんです。私もそのお返しをすべきでしょう」
 後藤は寿司を口に入れたままだったことを今思い出したかように、あわてて飲み込み、笑った。
 「おいおい! あんたも人が悪いな! もっぱら本だけで妄想を楽しんでるなんて言いながら、しっかりと本物の奴隷を飼っていたってことか?」
 源はゆがんだ唇をほんの少し動かして笑みを浮かべた。
 「……ただ奴隷と言っても相手が相手でしてね……うかつに話すわけにはいかないだけなんですよ。いくら嗜虐嗜好の持ち主であっても、経験豊富であっても、例の倶楽部に出入りできる方であっても……しかし、後藤氏になら話してもいい」
 「えらくもったいぶるじゃあないか。そんなにまずい相手なのか?」
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