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狂人、淫獣を作る
第1章 獲物
 数分後。
 女は、全裸で大きくM字に脚を開かされ、後ろ手に縛られたまま宙吊りにされていた。ボールギャグをくわえさせられている口の端からは、だらしなく唾液が糸を引きながら垂れ落ち、時おり照明を反射させて光っている。豊満な身体ではないが、全体的にほどよく肉が付いており、食い込む縄の様子が艶めかしい。何よりも、これから何をされるのか、不安と期待で潤ませているその瞳が――さっきまで清楚で貞淑にしか見えなかった女の瞳が、後藤の身体に棲む無数の欲情の蟲を呼び覚まし、胸をかきむしりたくなるほど嗜虐心という炎に油を注ぐ。
 ――女はモデルのようなバカな痩せ方をしているより、ほどよく肉が付いている方が断然縄映えする。
 後藤は目の前の奴隷――調教を始めて一年ほどの、マユの姿を見ながらそう思う。
 そして何よりも、マユの肉体は――若い。
 二十四歳の身体はしっとりと張りがあり、豊かで形のよい乳房は先端に付いている桃色の突起をツンと上に向かせている。
 緊縛され閉じることのできないマユの股間は脱毛され、日常のマユの印象とはほど遠い、アゲハ蝶のタトゥーが施されていた。アゲハは鶏のトサカのような二枚の陰唇を中心に大きく羽を広げている。
 本物のアゲハのように、円筒状で柔い弾力の、指でつまむと簡単にプチュッ……と潰れて体液が飛び散る胴体とは中央に割れ目がある点で異なってはいるが、その割れ目を指でほじくることで体液を飛び散らせる点では同じかもしれない。
 スーツに身を包んだままの後藤は、マユの潤んだ瞳を表情ひとつ変えず見つめている。しかしその身体の中では嗜虐の情念がマグマのように下腹部に集まり、股間の肉の槍へと突き進み、その先端を暴力的に膨張させていた。
 後藤は、ゆっくりと彼女へ近づいていった。
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