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狂人、淫獣を作る
第1章 獲物
(3)
※ ※ ※
「なるほど、可能な限り無垢の状態から染めていきたいという心理には共感を覚えますよ」源は、後藤のマユの調教についての語りがひと段落すると、そう言った。
「マユは俺が出入りしている倶楽部……この間話した例の秘密SM倶楽部だ……そこで紹介された女だった」
後藤はそう切り出し、マユは元彼と『ごっこ』としか呼べないSMまがいのセックスを経験していて、それがきっかけで倶楽部に来るようになったことを語った。形だけの緊縛、スパンキング――マユのアナル処女を奪ったのもその元彼だった。しかもコンドームなし挿入、直接射精のおまけつきだ。普通に膣での処女を失っていることは、見た目がおとなしそうであろうが二十代前半であれば珍しいことでも何でもない。しかし被虐に興味を持ったのも、アナルを貫通される感触を覚えたのも、直腸内に射精される味を知ったのも、後藤の手によるものではないことは変えようのない事実だった。
源は言った。「嗜虐被虐の何たるかを理解せずただ猿まねに終始したり、変わったセックスを試したりする若者が増えているのは、明らかにネットを始めとする情報過多のためでしょう。しかし後藤氏の執着は、失礼ながらやや病的にも聞こえます……ああ、批判ではありませんから誤解しないでください……その奴隷が結果的に苦痛だけでそれだけの性的絶頂を得るまでになったのは、あなたの腕の成せる技でしょう? その方がよほど困難な話だと思われますが」
「さっきも言ったろう? 足すことはできても引くことはできないんだよ」
「察するに、後藤氏は人一倍支配欲が強いんでしょうね……ではなぜそんな過去を持っているのを知った上で、その女を飼うことにしたんですか?」
「俺は単純に、できるだけ若い女の方が嗜虐心をそそられるからだ」
秘密SM倶楽部では会員が所有する奴隷のお披露目やパーティなどの他に、お互いの嗜好の合う二名を引き合わせることもあった。しかし倶楽部は、世間の目も警察の目もかいくぐって秘密裏に慎重に運営されているがゆえに、そこへ出入りすることはおろかその存在を知ることさえ容易ではなかった。逆に言えば、出入り出来る者は信用のおける人間であることが完全に保証されているも同然であった。そのような倶楽部内においてマユのような二十代前半という若さのM願望女性は非常に希少だったのだ。