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勤労少女
第1章
詩緒莉は、授業中一生懸命先生の話を聞いていた。
勉強は好きだ。分からないところもたくさんあるけど、知識が増えていくのが楽しい。
友達はいないわけではないが、少ない。どちらかと言えば無口な方で、メガネをかけた地味な顔立ちが一層声を掛けにくくしているらしい。陰では『地味』をもじって『ジミーちゃん』と呼んでる連中がいるのも知っている。
それでも、学校はイヤじゃない。あと二ヶ月もすれば二年生が終わるが、入学からずっと皆勤賞だ。勉強が好きだ、というのもあるが、もう一つ『理由』があった。
休み時間になり、詩緒莉は席に座ったまま、教室で友達同士でふざけあっているクラスメイトの高宮航太を時々横目で見ていた。
航太は、裏表のない性格だった。クラスの誰とでもすぐに打ち解けられる。めったに男子に声を掛けられることのない詩緒莉にも、分けへだてなく声を掛けてくれる。勉強も運動もできるし、他の男子と違い周りの意見にも簡単には流されない。詩緒莉には、他の男子に比べ航太は一、二段階早く大人に近づいてるように見えていた。
近くの席の女子たちが、誰々と誰々が付き合ってるらしい、という他愛もない話をしている。
その話を聞いて、詩緒莉は何気なくまた航太を見た。
目が合いそうになったので、詩緒莉は慌てて目をそらして窓の外を見た。
なんとなく、詩緒莉は自分の頬が少し熱くなっていることが分かった。
突然、大声が聞こえ、机や椅子がガタッと音を立てた。その時、かすかに布が破れるような音もした。