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〝真〟MonsterRaper
第7章 デュラン-番外編
周囲に炎が吹き上がった。
デルレイが、ゴブリンの巣穴に火を放ったのである。コボルトであるデルレイは火が嫌いである。獣人コボルトにとって火は畏怖する存在だ。だが、すべてを死滅させ消す。

だが、その様子をゴブリンの上位種であるボブゴブリンはヒヒーン(竜馬)にまたがり、見つめていた。
炎上する仲間の巣に、彼は怒りを噛みしめ、報告のため身を翻し、斜面を駆けあがって戻っていった。



「どうした? ダーベラ。 新天地の様子は?」
ダーベラと呼ばれたボブゴブリンは、ハッとしてヒヒーンを操り、声の主に向き直った。
そこには、ボブゴブリンではなく、ゴブリンの雌がいた。ゴブリン族の若き王女である。
ジャスワントの少女ような美しさとも、デルピュネのような妖艶な美しさとも違う。知性的であり野性的な美しさであった。

「……ズメディ様…調査隊が根城にしていた巣窟から火があがっております…全滅かと…」

「何だと!? 火は使うなと厳守させなかったのか!」

「火など…我々は使えません」

ゴブリンは、特に火を忌み嫌う。原因は戦争で人間が死体を焼く役目をゴブリンにさせたり、ゴブリンには焼印を押されたりと、戦争では体の小さい彼らに対するいじめが横暴したのだ。

「火は使用する者をウソ偽りなく映す鏡とされている。すぐに救助に向かえ! ボブゴブリンは全員だ! 早く」

「はっ」

ダーベラはヒヒーンのきびすを返すと、腹に蹴りを入れた。

「樹海で火を使えばエルフとの協定が結べなくなる……いったい何が起きたというのだ!?」
ズメディもヒヒーンで斜面を駆けあがっていった。


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