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〝真〟MonsterRaper
第3章 疾風の天使
「まずいっ!」

一歩で距離を詰めたハーピーは、休む暇もなく飛び上がる。
たくましい美脚と鋭い爪で俺を踏みつぶすつもりだ。

「コノォ!」

着地点は推測したわけじゃない。
ただ、反射的な衝動にまかせ体を動かす。
爪は、ヘルメットをかすめ、後方に着地した。

構える余裕もなく、ハーピーはさらに襲いかかるべく身をかがめる。

また飛びかかってくる!
ところが、直後、ハーピーは予想外に全身を力ませた。
そして翼を大きく強く羽ばたかせた。
何かが拡散しながら、空を舞った。

「真空刃っ!?」

ソニックブームが俺の周りを飛び交う。
真空刃に視線を奪われた俺は正面の警戒が甘くなり前方からくる風を直接、身に受けてしまった。
近距離なため、その風圧だけで俺は軽く吹っ飛ばされた。

「うあぁぁ!」

ハーピーの蹴り上げた左脚が、バランスを崩した俺の脇腹を捉えた。
脳天まで突き抜けるような激痛が襲いかかり倒れ込む、も脇腹を押さえこんでうずくまるわけにはいかない!
バランスの崩した足で踏ん張りが利かず、不安定な体勢だからこそ衝撃を完全に吸収せずにダメージを逃がすことができた。
衝撃に逆らうことになっていれば、肋骨をやられた。
それほどハーピーの蹴りは強烈だった。

「ぐぅぅぅ」

痛みに息が苦しい。
それでも追撃を恐れ、笑う膝で立ち上がる。
大慌てで頭を振り、銃を保持していない左の拳で足を叩いて感覚を取り戻させた。

ハーピーが飛びかかってくる。
なんとか前転でこれをかわす。
ただ、ハーピーは連続して飛びかかってくる。
へたに避ければ二度目、三度目の飛び蹴りがかわせない。

「エエィ!チョコマカトォ」

激怒し、大きく飛び上がったハーピー。
膝が天を仰ぎ、大胆にも頭上で妖艶なピンクの花びらが見える。

ハーピーを無傷で捕獲するのは不可能だ。
人に比べて、翼のあるハーピーは小回りの利く前転や側転の動きにはついてこれない。
結果、誰もいない空間に突進する。

ハーピーの股下をくぐるように前転で避けた。
銃を装備する以上、どうしても前転が重要になる。
回転した遠心力でそのまま立ち上がるからだ。

考えた結果はすぐに出た。
重々しい衝撃が、すぐ背後に着地する。


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