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ジャスミンの芳香~悦楽エステ令嬢~
第2章 触覚の虜囚
くるぶしの外側にもその周辺にも
痛烈なポイントが、幾つもあった。

「ああ……
経絡(けいらく)が、見える……」

刺激されているのは、足だ。
だがその刺激は全身に巡り
ほかの部位へと繋がった。
ほかのどこかが、癒されているのだ。

だからこそ生じる
この白い爆発……悦楽。

己の人体……この小宇宙を、意識が駆ける。
膨大な経絡の迷路を、さまよう。
不安と興奮にうち震え、旅をする。

その導き手は、スミカ。
足元の暗がりに身を潜め
疲れを知らぬ施術を送り込み続ける。

……さっき一瞬見た、スミカの瞳。
濡れたように、輝いていた。

はじめ会った時の涼やかな印象とは
随分違って見えた。

もう無機質とは言えない様な、情感。
俺の、気の所為なのだろうか……

気になって、足許をチラチラ見てみる。
が、暗くて確認できない。

マスクを外した今でも
状況はまるで変わっていない。

視覚は頼りにならない。
触覚が意識の中央で、肥大していく。

スミカの両手が、ふくらはぎの方へ遡る。
滑らかな運指で、絞りこんでくる。

力強さのなかに
繊細なハーモニーを織り込んでくる。

俺の筋ばった腱に
絵の具を落としたように、触覚が滲んでいく。

「ああ、繋がっていく……」

また、感嘆していた。

膝下から遡ってくる癒しが
背中・腰の爽快感へとジョイントしてくる。

トンネル工事の開通式にも似た、歓喜。


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