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彼依存
第15章 ステージ8



「藍ちゃんさっきのじゃ足りひん?」


「べ、別に…っ」


「大丈夫、これからすっごい楽しいから」


「意味分かんないよ」


「さて、行こか」




ジャケットと鍵を手に玄関に向かい
ブーツの爪先をトントン鳴らしながら
鼻歌混じりに出ていく。
その後ろをまだ冷めきらぬ躰のまま
足早に着いて行く。




陸となにやら楽しそうに話す雅は
私を一瞥すると意味ありげに笑って
車のドアを明け"どうぞ、姫"とからかった。



「昼間っから雅の指でイッたの?」


「っ、う…ん」


「じゃ、まだ躰収まらないね」


「もういいの」



二人してからかうような口調で
私を虐めてくるもんだから
店まではいじける事にした。


流れる景色は何も変わってないのに
いつものままなのに
私は1日、また1日と
彼等と過ごす日が増える毎に
変わっていってるの。
違う、戻っていってるんだ…
頭では理解できてはいけど
変わっていく私を躰は対応するの。
感覚を取り戻すように…




「なんでかな…」



「ん、藍何か言った?」



「何でもないよ」




何で私は忘れちゃったんだろ。
陸や雅の事を…
何でこんなに大切にしてくれる人達を
全て忘れてるんだろ…




「はぁ…」




大きな溜め息は
開けられた窓から入り込む風に乗って
何も変わらない街へと消えていく。




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