パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第16章 理想の家族

父親は仕事も家庭も大切にして
母親は旦那と子供を愛して
大きな庭には犬を離し
休日は家族で過ごす。


理想の家庭がそこにはあって
自分が大人になっても
きっとそれは続いていく。


別に裕福じゃなくてもいい
小さいアパートだって構わない
毎日が笑顔でいられるなら
それ以上はいらない。


父親と母親と自分。


仲がいいはずだった
いや、はずじゃなくて
しっかり繋がるものは存在していて
疑うものなんか無かった。


母親を大切にする父親も
父親を大切にする母親も
愛されている自分も
嘘なんかない幸せな家庭だった。




「お前はお母さんと行くのか？」

「陸はお父さんがいいの？」




「俺は、どうしたらいい？」





予告も無しにいきなり告げられた離婚の言葉。
仲が良かった俺の母親と父親は？
毎日楽しかった幸せな日々は？
続くと信じていた俺の気持ちは？

何処に消えた？




「分からない」


「お母さんとおいで」


「分かった」



何も分かってない。
分かりたくもない。
なのに咄嗟に出た言葉。

困らせたらいけない。
もしかしたらまた家族に戻るかもしれない。
少し我慢したらきっと…



「陸、元気でな
何かあればいつでも来なさい」


「分かった」



ほら、いつだって会えるじゃないか。
ただ少し喧嘩しただけなんだ。
またか家族に戻る…



幼かった俺は現実を受け止められずに
ひたすら信じていたけど
その想いは叶わなかった。