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彼依存
第16章 理想の家族
だから少しだけ自由を求めたんだと思う。
母親としてではなく女性としての
幸せが足りなかった母親は
父親の再婚を機に本当に少しだけ
自分の幸せを優先した。
「ごめんね陸」
「それが、幸せなの?」
「多分ね、今はまだ分からないけど」
母親には笑っていて欲しい。
此処まで育ててくれたんだから
俺が居なくなる事で
少しでも幸せだと感じられるなら
喜んで家を出よう。
親孝行って、これで合ってる?
俺のした事は間違ってないよな?
電話片手に口論する母親を見て
なんとなく察した。
俺が邪魔になった訳じゃない
ただ父親だけが幸せなのが
少し妬ましく感じたんだ。
だから、あんな事…
思ってもいなかった事を…
「じゃぁ、自分の子供も幸せにしなさいよ」
言ってしまったに違いない。
通話終了ボタンを押した母親は
泣きながら謝っていたし
"大丈夫、大丈夫だからね"と
意味不明な事を呟いていた。
罪悪感?
一瞬でも俺を突き放したから?
そんな事きにしてないよ。
俺はね、あわよくばまた家族になれるなんて
淡い夢を描いていた頃の俺じゃないよ。
「お母さん、大丈夫だからね」
啜り泣く母親を宥め
俺は別れを言う訳でもなく家を出た。
間違ってない…
母親を1人にしたい訳じゃない…
開放したかったんだから…
「何かあったら連絡しなさい…ね」
背中越しにかけられた声に
微かに触れた手は
俺を愛してくれた母親。
大切な母親。
それは一生変わらない。
「た、ただいま…」
俺に妹が出来た日。