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彼依存
第16章 理想の家族
リビングから出ていくあいつは
泣くんじゃなく、怒るんじゃなく
"ごめんね"と気まずそうに笑った。
あの時悲痛な顔して泣いていたら
辛そうにしていたなら
俺の苛立ちも少し位
軽減されていたかもしれないのに…
そんな素振り見せもしない…
「はあ、ムカツク…」
深い溜息は虚しく部屋に響き
やりきれない表情で天井を見上げた。
広いリビングに1人きり
こんな居場所が欲しいんじゃない…
俺の理想の家族なんか願ったって
どう足掻いたって修復しない。
あいつのせいじゃない
新しい母親のせいでもない
親のせいでもない
なるべくしてなった事…
誰かを責めたい訳ではないのに
誰かに当り散らさなければ
苛立ちは募るばかりだったから
あいつの事を卑下し、追い払った…
「消えるのは俺なんだよ」
新しくできたあいつの理想の家族。
それを壊したって何も変わらないなら
自分が見なくてすむように
ここから出ていけばいい。
逃げてしまえばいい。
初めから1人だったみたいに…
「父さん、俺卒業したら家出る」
何も言わない父親は暫く黙り込むと
昔みたいに優しい笑顔を向け
"いつでも来なさい"とだけ言った。
母親も父親も俺を突き放したんじゃない。
しっかり帰る場所を与えてくれる。
それに甘えて駄々を捏ねている。
受け入れられないというだけで…
「ん、気が…向いたらね」
無愛想に言ったけど
変わらない暖かさに瞳が潤んだのは
上手く誤魔化せただろうか…