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彼依存
第16章 理想の家族
「可哀想とか思ってる?
一人ぼっちな俺が惨め?」
背の低いこいつを頭上から見下ろし
裾を掴んでいた手を払い除ける。
馬鹿にされているのか…?
一人な俺を哀れんでる…?
俺の苛立ちの原因こいつだ。
「いつもヘラヘラ笑って楽しいか?
自分には居場所があるからって
優越感に浸ってんのか?」
「ち、違うっ…」
「じゃ、可哀想なお兄ちゃんを
お前が慰めてよ?」
この時頭によぎったのは…泣き顔。
どうしても泣かせてやらなきゃ
気が済まなくなっていたんだ…
間違いだと、駄目な事だと
頭では分かっていたのに
行動した体は止まらなかった。
だってさ、どうしたって
こいつ泣かないんだから…
こんな方法しかないって…
初めこそ思ってた。
誰が悪い訳じゃないって
なるべくしてなったと…
でもそれで鎮火した訳じゃない。
ヘラヘラ笑い俺に懐くこいつが
少しでも泣いてくれれば
少しでも苦しんでくれれば
いい気味だと笑い返せる。
最低な八つ当たり…
分かってるって…
でも、それで楽になれるなら
「俺のために泣いてよ」
硬直させた躰に引き攣る顔。
若干後ずさりを見せるが机が邪魔して
二人の間には距離など出来ない。
静まりかえるリビングには
藍の不規則な息遣いが響き
ほのかに苺の香りが漂っていた…
「もう子供じゃないんだ分かるだろ?」
手を掴み早足で階段を上がり
藍の部屋を無断で開ける。
体に似合わない大きなベットに投げつけ
不安そうに視線を向ける藍は
震える声で小さく言った…
「お兄、ちゃん…」