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彼依存
第16章 理想の家族
父親から連絡がきた時は
あぁ、やっぱりなって
あの時のあいつの顔が過ぎった。
涙を流し体を震わせ目も合わさない…
言わないなんて嘘に決まってる
寧ろ言ってくれた方が楽になれるし
もう、何にもすがらず捨てる事が出来る。
理想の家族なんかもう夢みていないよ。
そんな事を着信音が鳴っている
たかだか数秒に考える。
軽快に鳴り響く着信音が
やたら煩く感じた。
「もしもし」
「今日来てたんだって?
何か用でもあったんだろ」
は?俺はてっきり…
あいつが今日の事言ったとばかり…
"いわないよ"
あいつは言わなかったのか。
酷く辛い思いを味わわせたはずなのに
何故俺のした事を言わないんだよ…
「あぁ、大した事じゃないから
それより…さ、あいつ…」
「ん?あいつ?」
「いや、何でもない
また連絡するから、じゃ…」
数秒で考えたものが消えた。
頭はふる回転しているはずなのに
何一つ考えがまとまらない。
電話に出る前より今の方が数倍早い心拍に
動悸、息切れすら感じている。
「無意味だったのかよ」
確かに傷付けたはずだった…
最悪な思い出を残したはずだった…
不満だったあいつの笑顔を
消してやれたと思ったのに…
考えても考えても答えは出ない。
震える体に、滲む鮮血が
寝ても覚めても常に頭に浮かぶ。
そうしたのは、そう望んだのは俺なのに…
何日経っても責められるような
連絡は来なかった…