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彼依存
第16章 理想の家族
父親に言われアパートを引き払い
この窮屈な実家に戻る事にした。
大きな庭には綺麗に花々が咲き
丸い白色のテーブルの傍には涼しげな噴水
昔は当たり前に見てきた景色…
今では実家に帰ったというより
新しく住む家のように新鮮に感じた。
初めてあいつに此処で会った時
控え目に頭を下げられたのを思い出す。
瞬時に感じた疎外感…
それはこれからも感じるだろう。
風に揺られる花々に
木々が揺れ和やかな気持ちにさせるのに
あいつの顔が浮べばそんな気持ちは
ざわつきと共に消えてしまう。
玄関を開ければ…
「雅、また来週ねっ」
そう明るく笑いながら雅と言う奴を
健気に送り出すあいつが居た。
どう見ても不釣り合い…
鼻で笑いたくなる程似合ってない。
「ども」
控え目に挨拶をするそいつは
ジャラジャラとアクセサリーをつけ
アッシュの髪を無造作にセットした
いかにもな奴で…
自らと違うタイプに嫌悪感すら抱いた。
頭だけ下げ家に入れば
奴を送り出したあいつも家に駆け込む。
にまにまと頬を緩め
鼻歌なんか歌いながら上機嫌に足を進め
先程まで奴と飲んでいただろうグラスを
キッチンに運んでいた。
苺ミルク…
コップに残った果肉で分かった。
あいつの好物…
好きな奴とキスする時の味ね…笑える。
「あ、お兄ちゃん
苺ミルク残りあるんだけど」
可愛らしいグラスに注ぎ駆け寄る…
そんなこいつの唇に目が行く。
奴とキスしたのだろうか…
「あぁ、喉乾いてたんだ」
手にしたグラスから
ピンクのそれを一口流し込み
共に苺の果肉も入り込んだ。
「んっ、っっ…」
咥内に残った果肉を舌で押し込む。
苦しそうに息をしていたって気にしない
抵抗しようと押し返す手も物ともしない
見開いた目で訴えたって離してやらない
「お前は誰の玩具だ」
唇を離し涙目になるこいつに
頭上から低い声で問い詰める。
「お前がしたかった苺ミルク味のキス
あいつとしたんだろ」
やめろ…
こんな嫉妬みたいな言い方…
「どうだったんだよ
今みたいな味だったか」
お気に入りの玩具を取られた子供みたいに
好きなやつを虐める小学生みたいに
低レベルな嫉妬…
こんな感情おかしいだろ。
「も、やめ…て…お兄ちゃん」