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彼依存
第16章 理想の家族



「あいつとした味を聞いてんだよ
止める止めないは聞いてない
それにな、止める時は
お前の大切なものを崩す時だ」



自分の玩具だと思っていたからか
奴とキスしたと分かれば
無性に腹が立つんだよ。
こいつに好意なんて愛情なんて
欠片程も無いのに…



「崩すなんて…おかしい…
お兄ちゃんだって、家族…なのに」



酷い事をしようが
何度泣かせようが
赤く染めてやろうが
どこまでいっても俺は兄だと言う。
そして家族なんだと。


「誰がお前と家族なんだよ
勝手に家族だと勘違いして
俺は一度だってお前らを家族だと
思った事はない」



早口だったと思う。
冷静なんかじゃなかった。
想いを口にする時とは
こんなにも感情的になるんだと知った。
息を切らせ心拍が上がり
拳を握る手が微かに震えたんだ。



「勘違いじゃない
私はお兄ちゃんができて嬉しかったのに」



「のに?
こんなんで幻滅したか」



「そうじゃない…
いつも1人みたいな顔してて…」



「それが最初に言った同情だろ?
俺を見て可哀想だと腹の中で笑ったか?」



「だ、だから…違うよ…
お兄ちゃんが辛いの分かってたから
1人にしたくないって」



「だから、無理矢理犯されても
ヘラヘラ笑ってんだ
頭おかしいだろ?神経疑うわ…
同情で兄と思った奴に犯られて
何言ってんの?」



こいつが言うのは綺麗事。
辛いから?
可哀想だから?
そもそも俺の何を知ってるんだ。
何も知らないくせに
分かったような口ぶりで
偽善者ぶるのも大概にしろって…



「私は此処に来てから頑張って笑ってる
したくてヘラヘラしてるんじゃない
1人なんだと何度も思ったよ」



こいつは震えるか細い声で続けた…


無理してでも笑ってなきゃ
親が安心しないんだと。
自分に気を使ってるのが分かるのだと。
心では父親だと受け入れてなかった時も
なんとかお父さんと口に出していたと。
それもこれも…
大好きな母親の幸せを願うからだと。
優しくしてくれる父親に
申し訳ないからだと。




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