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彼依存
第8章 ステージ5
「ほんまの姿」
「本当の姿って…?」
「今の藍ちゃんは作りもんやろ?
そうやなくて元々の藍ちゃんが
俺は見たいねん」
「陸も、み…雅もよく言うけど
本当の私って何?
私が知らない私を知ってるの?」
まだ慣れない雅の名前。
なのに呼び慣れた感覚は何で?
ほら…また引っかかる…
私雅の事も前から知ってたの?
「知ってる
多分今の藍ちゃんより
藍ちゃんに詳しいで」
「なん…で…?」
知るのは怖い。
私が知らない私は何なのか?
聞いたら今の生活が変わってしまう…
そう直感で感じた…
《思い出は思い出す為にある》
お父さんは言ったけど…
その言葉の反対には
《知らなくていいから忘れている》
そう誰かが言った気もした…。
知らなくていい事なの?
それとも思い出さなきゃいけない事?
「不安なんやろ?」
「え…」
「顔に出てんで
てか、無理に知らんでもええんやない?
その時が来たら…
自然と蘇ってくるやろうし」
「知らなくてもいい事…なの…?」
「それは藍ちゃん次第やな
俺と陸は藍ちゃんの為とか言いながら
半分以上は自分の為やから
今が嫌になったらやめたらええよ
止めたかて怒らんからな」
「そ…っか…」
「ただ、藍ちゃんが嫌がらんうちは
たっぷり可愛がったるからな」
真剣な表情から一変
柔らかい笑みをこぼす雅は
私の不安な心を消すように
その場の空気を変えた。
今私は…
自ら望んでいる…
彼等の手で変わっていく事を…
「今は…嫌、じゃ…ない…」
「なら良かった」