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彼依存
第9章 涙痕に
《知らなくていいから忘れてる》
きっとこの言葉を忠実に守ってる。
藍の思いでには俺が居ない…
雅だっていない…
《思いでは思い出す為にある》
思い出にすらならないなら
身体に残してやらなきゃ
もう二度と忘れられないように…
「邪魔になってんのは…俺か…?」
「ちゃうやろ、考えすぎやわ」
手に握られたパック。
藍が好きなモノは何だって知ってるし
こんなにも近くにいるのに
何故思い出さないか…
気長にと思っていた気持ちに
焦りが出始めた。
「あー、そやな…何て言うか
あんまり考えたらあかんよ」
気休め程度な言葉かもしれない。
かける言葉が無く何となく出ただけかも…
それでも伝わる雅の優しさは
本物に違いない…
同じ気持ちを味わってきたのだから…
「ありがとな」
ベットで寝ている藍の両サイドには
切ない気持ちの男が二人。
無防備な全裸の藍を抱きしめ瞼を閉じた。
きっと明日は思い出してくれると
淡い期待を抱いて。