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徒然なる日々
第2章 新しい楽しみ
コンクリート打ちっぱなしの無機質な外壁の三階建ての家。

玄関の門や窓枠など部分的には無垢の木を使っているが、家全体を見た場合にはコンクリート特有の灰色の割合が多い為、冷たさを感じてしまう。

一階は玄関・和室・納戸、二階は子供部屋三部屋・両親の寝室・浴室、三階はリビングダイニングキッチン・父の部屋がある。

家はコの字型になっており、玄関と和室・知美の部屋と両親の寝室・リビングダイニングキッチンと父の部屋が向かい合う形だ。

家には独立した階段室があるが、業務用エレベーターも完備している。

父が知り合いの建築家に設計を頼み作らせた家は、三億円全額キャッシュで建てた自慢のマイホームだった。
元々、木造だった家を父が祖父から受け継いでいたが、関東大震災にも耐えた家は古く、酷く傷んでいた為、父が一度更地にして新しく家を建てたのだ。

周りは古い家が多い中で、一際目立つこの家が知美の家だった。
一時は区長よりも高い税金を国に納めていた父には相応しいのかもしれないが、学生服を着て、重々しい門の鍵を開けるのは自分には不釣り合いな気がして、未だに緊張してしまう知美だった。

玄関でローファーを脱いで、巨大なシューズクローゼット前にあるスリッパに足を通す。

階段で二階の自分の部屋に行き、真ん中に置いたベッドに寝転んだ。

起き上がりオレンジ色のロールスクリーンを上げると、窓から両親の寝室が見える。

上に目をやると、三階のリビングの窓。
レースカーテンごしに母の姿がうっすらと見えた。

「知美?帰ってきたの?」

三階から母の声がした。

少しゆっくりしたかったのに、知美は軽く舌打ちすると「ただいま。まだ着替えてないから、手を洗って着替えてから行くー」と声をかけた。


自分の反抗期を押し殺して良い子を演じていた知美は、最近自分の中で暴れそうになる感情を抑えるのに疲れきっていた。


感情を全て解放したい、でもそんな事をしたら家にはいられなくなる。


そんな苦しみから知美が唯一救われるのは、学校の帰り道に裕之と電話で話す時だけだった。
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