この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
後宮艶夜*スキャンダル~鳥籠の姫君は月夜に啼く~
第2章 家出
〝我唯流離〟と最後の一行を書き付け、芳華は熱い滴が頬をつたい落ちるのを憶えた。
「お嬢さま」
背後から侍女の凜鈴がそっと声をかけてくれる。凜鈴は今年、二十歳になる。二年前に亡くなった乳母の娘、つまり乳姉妹になる。四歳で生母を失った芳華にとっては優しかった乳母が母であり、いつも側に居てくれた凜鈴こそが姉であった。実の娘を自分が権力を得るための駒にするような父など、この世でたった一人の身内とも思いたくない。
「凜鈴」
芳華は凜鈴に抱きついて、父の前ではひと粒も見せなかった涙を流したのだった。
「お嬢さま」
背後から侍女の凜鈴がそっと声をかけてくれる。凜鈴は今年、二十歳になる。二年前に亡くなった乳母の娘、つまり乳姉妹になる。四歳で生母を失った芳華にとっては優しかった乳母が母であり、いつも側に居てくれた凜鈴こそが姉であった。実の娘を自分が権力を得るための駒にするような父など、この世でたった一人の身内とも思いたくない。
「凜鈴」
芳華は凜鈴に抱きついて、父の前ではひと粒も見せなかった涙を流したのだった。