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第10章 後宮艶夜＊スキャンダル 　深き眠りの底で～浄心院での日々～

「お祖母さま、ところで、先刻、珍しい女人に逢いましたよ」
　鵬純は半ば強引に話を変えた。年寄りの常で、放っておけば延々と昔語りが続きそうな気配がしたからだ。いつもなら年寄りの昔話を聞くのも孝行だと辛抱強く耳を傾ける彼もこの日だけは気が急いていた。
　自分でも何故、あの娘―いや、ただの娘ではない、先帝の皇后だ―のことがそこまで気になるのか判らなかった。