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後宮艶夜*スキャンダル~鳥籠の姫君は月夜に啼く~
第3章 偶然という運命の悪戯
本当は紅珊瑚の簪が欲しいと思っていた。後宮に置いてきたあの簪―、父が嫁入りのためにわざわざ作らせたあの簪は芳華のお気に入りだった。だから、あの簪には到底及ばなくても、安物でも良いから紅珊瑚の簪を一つ買おうと思っていたのだ。
だが、男の薄紫の瞳とその抑揚のある深い声に気を取られている中に、もう何が何だか判らなくなってしまい、芳華が口にしたのは、
「紫水晶の簪って、あるかしら」
と、考えてもみなかった科白だった。
だが、男の薄紫の瞳とその抑揚のある深い声に気を取られている中に、もう何が何だか判らなくなってしまい、芳華が口にしたのは、
「紫水晶の簪って、あるかしら」
と、考えてもみなかった科白だった。