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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

「じゃ、私達も行こっか」

「だね……」

 そう言い合って立ち上がった双子は、食洗機にカトラリーを突っ込むと、

 ここから車で15分のリンクへ行く準備を始めた。








 6月24日(土)で、クリスとダリルの2年生としての第3学期(トリニティー)が終了した。
 
 その夜、学部生の2人はトリニティーターム・ディナーに、おめかしして出掛けて行き。

 その翌日、25日(日)。

 いつも通りに早朝からリンクで練習する双子は、執事のリーヴが届けてくれた朝食に舌鼓を打っていた。

 スポンサーである大塚薬品工業――日本にいる栄養士の和食中心の献立を、リーヴは手間が掛かるだろうに完璧に再現してくれていた。

 ブルネット(栗毛)の長めの髪に、鼻筋がすっと通った顔立ちのその人。

 自分達と7歳しか変わらない若い執事は、元々親日家だったらしい。

 双子が渡英して居を構えるにあたり、ハウスキーパーでも雇おうかと考えていた折、

『うちの執事のリーヴが「日本語と和食の勉強を兼ねて、破格で雇って欲しい」って言ってるけど、どう?』

と、父方の祖母・日本人の菊子が、紹介してくれた。

 こちらとしては願ったり叶ったりで、リーヴを執事として雇い入れたのだ。

「今日も美味しいよ、ありがとう、リーヴ」

 日本語で話し掛けたヴィヴィに、

「恐れ入ります。今日のレシピは梅がアクセントで、食が進むかと」

 流麗な日本語を操る執事は、青い瞳を細めた。

「うん。大葉も効いてる……。手に入るんだ、英国で……?」

 クリスの感心した声に、

「はい。園芸市場で苗を入手しまして、先月から庭の一角で大葉を育ててみました」

 さすが生粋の英国人。

 造園にも目が無いらしく、屋敷の前庭と裏庭は、常に美しく整えられていた。

 ただ、以前ヴィヴィが草むしりを手伝おうとしたら、きっぱり断られたが――何故だ?

 叩いた梅肉の乗ったササミを咀嚼しながら、ヴィヴィは傍に立つリーヴをじいと見つめる。

(しかし、お肌、綺麗だなあ……)

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