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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章
彫りの深い瞳の下、口までの距離が長い(頬の面積が日本人に比べて広い)執事。
そのお肌が白くて肌理細やかで。
女ながらに嫉妬してしまいそうな美しさに、ヴィヴィの灰色の瞳が胡乱気に細まり。
「お嬢様、私の顔に何か付いておりますか?」
潔癖症のきらいがる……じゃなかった “綺麗好き” のリーヴは、少し心配そうに自分に問い掛けてくる。
もし その美しい頬に長い睫毛1本でも落ちていたら、彼にとっては一大事なのかもしれない。
「ううん。お肌、綺麗だなあと……(-_-)」
嫉妬丸出しで、馬鹿正直に答えたヴィヴィに、
「ええと……、リーヴ。緑茶、おかわり……」
クリスが呆れた様子で、フォロー(?)を入れるのだった。
2階のカフェでの朝食を終えた双子は、また1階のリンクへと降りて行く。
2面ある国際規格のリンク。
ひんやりした空気に気を引き締め直した、ヴィヴィの視線の先、
壁に取り付けられたカメラが目に入り、金色の前髪の陰で細い眉が微かに強張る。
「………………」
昨年の5月から、このリンクの世話になっている双子の周りでは、ある事件が起こっていた。
双子が東大からここ オックスフォード・SCへと、所属を移すと発表したのと時を同じくし、
リンクの所有者 = オーナーが変わったのだ。
新たなオーナーは、英国の有限責任中間法人で。
咄嗟に悟ったクリスが調べたところ、その法人に出資しているのは日本の匿名組合。
そしてさらに先を辿れば、その匿名組合員のリーダーは、篠宮 匠海――その人だった。
本来なら “匿名組合” というその名が示す通り “匿名” で出資を行える事を利点としているその組織。
けれどクリスは、投資企業の長である父のつてを使い、簡単に調べ上げてしまったのだ。
そして、新たなオーナー会社は「所有資産の付加価値の向上」を謳い文句に、1面のリンクにカメラを取り付けてしまった。
今やフィギュア大国となった日本に於いて、多数の五輪選手を送り出している中京大学。
同大学の工学部、瀧 剛志 准教授が中心に開発したカメラだった。