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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第2部
第1章  

「え……? エッセイ書くんじゃ……?」

 クリスの不思議そうな問いに、

「書くためのネタを拾いに行くのヨ! チューター酔わせて、口を割らせてやるっ」

 そう言うや否や、ダリルは大股で階段を駆け上がって行き、

 どったんばったん賑やかな音を立てていたかと思うと、またドタドタ足音を立てて駆け下りて来た。

「が、がんばって」と、少々呆気に取られたヴィヴィ。

「自分が先に、酔っぱらわないでね……?」と、的確なアドバイスを送るクリス。

 双子にうんうんと頷いて見せたダリルは、ヒョウ柄のワンピから伸びた美脚をことさら強調し、

「双子もリンクでしょ? 気を付けてネン♡」

 投げキッスを飛ばしながら、お尻を振りふり出掛けて行った。

「ふふ、上手くいくと思う?」

 苦笑するヴィヴィに、

「……泥酔して帰ってきて、明日の朝、泣くに1票……」

 クリスが瞳を眇めながら、まるで未来を予知するように呟いた。

 お判り頂けただろうか――?

 そう、ダリルは女装家で、

 しかも男性しか性対象としない……所謂ゲイさん、だったりする。
 
 昨年の9月1日――匠海と瞳子の第一子が誕生した、ヴィヴィにとっては この上なく虚しかったその日。

 同い年のダリルと出会ったヴィヴィは、意気投合(?)し。

 妙に居心地の良い双子の傍に居着いた彼は、そのまま この屋敷に同居する事となった。

 レンガ造りの2階建て、白い窓枠が印象的な屋敷には、

 2階に、2つのマスターベッドルームに、4つのベッドルーム。

 加えて1階には、

 キッチン、ダイニング、リビング、サンルーム、バスルーム。

 そして、贅沢にもライブラリーに、防音室まで完備している。

 楽器演奏を趣味とする双子にとって、この上なく理想的な屋敷だが、

 何故こんなに広い屋敷に、居を構える事となったかというと、

『私が遊びに行く そん時の為に、おっきな屋敷を選んでおいてあげたわ!』

という母・ジュリアンの鶴の一言で。

 渡英した双子には(勝手に)この屋敷が準備されていたのだ。
 
 よって、双子だけでは広すぎるそこに、ダリルという賑やかな人間がいてくれるのは、とても助かっていた。

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